四百年の恋

　すでにもう、辺りはメチャクチャ。


　後片付けもしなければならないだろうし。


　｢大丈夫、何も心配しないで。早く忘れて、ゆっくり眠るんだ……｣


　何もかも忘れさせるように、福山は真姫の唇を塞いだ。


　真姫は満たされた表情を見せる。


　自分には見せなかった、満ち足りた表情。


　それに嫉妬した圭介は、福山に殴りかかろうとした。


　｢吉野くん、やめて！｣


　真姫の叫び声で圭介の突進に気付いた福山は、直前で身をかわす。


　すると圭介は床に落ちていたガラス片を手に、再び福山に襲い掛かってきた。


　｢やめて！｣


　思わず真姫は、福山の元に到達する前に圭介を突き飛ばした。


　想定外の衝撃で、圭介の体は大きく宙を舞い、階段の吹き抜け部分の方へと……。


　｢吉野くん！？｣


　そんなに力を加えたはずもないのに、予想外に圭介が吹っ飛んでいってしまったため真姫は慌てたのだが。


　その後の記憶がない。


　ただただ、深い闇の中をさまようかのように、全ての意識は暗黒の中へ……。