四百年の恋
……毎年恒例の、大沼方面視察の時期となった。
はるか福山城を離れて。
月光姫を同行させ、この隙に手に入れてしまおうと冬雅は目論んだのだが、それを察知したのか正室も温泉保養のため同行すると言い出した。
公家出身の正妻には頭の上がらない冬雅。
この地で姫を抱くのは不可能だと、あきらめざるをえなかったのだが。
……今回、側近の赤江が留守居役を名乗り出たのが、冬雅は少し気になっていた。
「殿の留守の間、福山城をお守りいたします」と。
冬悟にも留守居役を任じていた。
月光姫を大沼まで連れて行き、その地で我がものにしようと企んでいたので、冬悟に邪魔されないよう城に残しておいたのだ。
(なぜ赤江までも……?)
冬雅は赤江が、何か恐ろしいことを企んでいる予感がした。
だが見て見ぬ振りをしていた。
(月光姫を手に入れるためならば、私は……)
罪に手を染めることも厭わなかった。
やがて冬雅の予想は的中した。
赤江からの急使が大沼の地に駆けつけ、冬悟の謀反の知らせを届けた。
(赤江の仕業だ)
冬雅は察したが、もう後戻りはできない。
はるか福山城を離れて。
月光姫を同行させ、この隙に手に入れてしまおうと冬雅は目論んだのだが、それを察知したのか正室も温泉保養のため同行すると言い出した。
公家出身の正妻には頭の上がらない冬雅。
この地で姫を抱くのは不可能だと、あきらめざるをえなかったのだが。
……今回、側近の赤江が留守居役を名乗り出たのが、冬雅は少し気になっていた。
「殿の留守の間、福山城をお守りいたします」と。
冬悟にも留守居役を任じていた。
月光姫を大沼まで連れて行き、その地で我がものにしようと企んでいたので、冬悟に邪魔されないよう城に残しておいたのだ。
(なぜ赤江までも……?)
冬雅は赤江が、何か恐ろしいことを企んでいる予感がした。
だが見て見ぬ振りをしていた。
(月光姫を手に入れるためならば、私は……)
罪に手を染めることも厭わなかった。
やがて冬雅の予想は的中した。
赤江からの急使が大沼の地に駆けつけ、冬悟の謀反の知らせを届けた。
(赤江の仕業だ)
冬雅は察したが、もう後戻りはできない。