四百年の恋
「騒ぎ立てては、領内に動揺を与える。私は明日の朝一番に福山城に戻る。他言は無用だ」
冬雅はごく近しい側近たち以外には、この事実を伏せていた。
そして翌朝、密かに福山城へと舞い戻った。
「殿、冬悟さまはこともあろうに、この赤江に謀反を呼びかけてまいったのですぞ」
冬雅の顔を見るなり赤江は、こう告げた。
周辺の有力者たちに謀反に同調することを呼びかけた書状も、押収されていた。
用意周到。
(赤江はあらかじめ計画して、冬悟を罠に嵌めたのだな)
冬雅は直感した。
冬悟は陥れられたのだと。
だが直筆の書状が証拠として挙がっている以上、放置しておくわけにはいかない……。
「嘘です! 冬悟さまが謀反だなんて」
大沼から馬で駆けつけてきた月光姫が、冬雅に訴えた。
「兄弟は最も近くにいる、最も油断できない敵。……それが乱世の常識ではないか?」
「殿と冬悟さまは、母違いとはいえご兄弟ではないですか。肉親の言い分をもっとお聞きになっては」
「涙を流すほどに、冬悟を想うのか。……そなたの出方次第では、審議をじっくりやってもいいのだが」
冬雅は冬悟の助命と引きかえに、月光姫の体を要求した。
月光姫は冬悟のためならばと、一瞬あきらめかけたが、
「震えて嫌がる女を脅して抱くのは、風流ではない」
冬雅は考え直した。
冬雅はごく近しい側近たち以外には、この事実を伏せていた。
そして翌朝、密かに福山城へと舞い戻った。
「殿、冬悟さまはこともあろうに、この赤江に謀反を呼びかけてまいったのですぞ」
冬雅の顔を見るなり赤江は、こう告げた。
周辺の有力者たちに謀反に同調することを呼びかけた書状も、押収されていた。
用意周到。
(赤江はあらかじめ計画して、冬悟を罠に嵌めたのだな)
冬雅は直感した。
冬悟は陥れられたのだと。
だが直筆の書状が証拠として挙がっている以上、放置しておくわけにはいかない……。
「嘘です! 冬悟さまが謀反だなんて」
大沼から馬で駆けつけてきた月光姫が、冬雅に訴えた。
「兄弟は最も近くにいる、最も油断できない敵。……それが乱世の常識ではないか?」
「殿と冬悟さまは、母違いとはいえご兄弟ではないですか。肉親の言い分をもっとお聞きになっては」
「涙を流すほどに、冬悟を想うのか。……そなたの出方次第では、審議をじっくりやってもいいのだが」
冬雅は冬悟の助命と引きかえに、月光姫の体を要求した。
月光姫は冬悟のためならばと、一瞬あきらめかけたが、
「震えて嫌がる女を脅して抱くのは、風流ではない」
冬雅は考え直した。