四百年の恋
 「冬悟さま!」


 「生まれ変わって……また巡り会おう」


 柵越しに一瞬見つめあう二人。


 姫は柵を握り締め、泣き叫びながら。


 馬上の罪人は、白い着物姿で縄に縛られている。


 全てをあきらめたのか悟ったような表情で、無言で姫を見つめる。


 行く先は、刑場。


 この世では二度と会うことのない二人……。


 弟の死を見届けた冬雅の意識は、月光姫との対面の場へと飛ばされる。


 「赤江を利用して冬悟さまを煽り、陥れたのは、殿ご本人ではないのですか!」


 「この世は闇だ。闇の世界に光を浴びて散りゆく、淡い色の花びら。そんな花びらをこの手にしたいと願った」


 「それだけのために……。殿は弟君を排除なさったのですか……」


 「大切にする。冬悟の分も」


 「これ以上近寄るならば、私は冬悟さまの後を追わせていただきます!」


 「冬悟は私に負けたのではない。自分自身に屈したのだ」


 支配者として冷たく言い放つ。


 そして意識はさらに、月光姫を初めて奪ったあの夜へ……。


 「久しぶりだな、月光姫」


 「殿……!」


 「私に逆らえる者など、福山城下にはおらぬ」


 「おやめください!」


 ……。
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