四百年の恋
***


 「!」


 がばっと圭介は飛び起きた。


 目が覚めた瞬間、意識が混濁している。


 「……」


 しばらく呆然としていると、徐々に状況が見えていた。


 赤ワインを飲みながらテレビを見ていて、寝ていたようだ。


 時計は午前二時。


 つけっ放しのテレビは、テレビショッピングの時間。


 圭介はいつの間にか眠りに落ちていた。


 そして夢を見ていた。


 夢の内容は、思い出すだけで身の毛がよだつような内容だった。


 (俺は……福山冬雅!?)


 冬雅の目を通じて、一連の事件を体験していた。


 「荒唐無稽な夢」


 そうつぶやいて、笑ってやり過ごそうとした。


 だが笑って済ますことなどできなかった。


 あまりに臨場感溢れる夢で。


 それだけではなく、今まで体験してきたことの記憶が鮮やかに呼び覚まされ……。


 (夢などではない)


 そう判断せざるを得なかった。


 圭介は「福山冬雅」だった頃の記憶を取り戻した。


 弟に死を宣告する時の、やるせない思いを。


 月光姫を永遠に失った時の、この上ない悲しみを。
< 585 / 618 >

この作品をシェア

pagetop