四百年の恋
 「で……、吉野くん。あの教え子さんとはどういう関係なんですか?」


 「えっ」


 「何もないとは言わせませんよ。車で一時間以上かけて、ここまで二人きりで来るくらいですし、それに彼女、恐ろしいくらいに花里さんにそっくりです」


 「そう……とも言えるな」


 圭介は素っ気なく答えた。


 「まさか吉野くん、花里さんに瓜二つってだけの理由で、教え子とまさか禁断の……」


 「バカ言うな」


 圭介は苦笑してオタクの話を遮った。


 「彼女が真姫に似ているのは偶然。専攻が史学科だったから、勉強のプラスになればと思って連れて来た。それだけだ」


 とだけ答えてチケットを受け取り、圭介は美月姫の元に戻った。


 「吉野くん!」


 「それじゃまた」


 オタクを置き去りにして、圭介は美月姫を連れて、展示場に入ったのだった。


 ……今まで圭介は、美月姫に福山冬悟や月光姫の話をするのをためらっていた。


 余計なことをして、前世の記憶を呼び覚ましてしまわないように。


 美月姫に逃げられないように。


 だが自分の前世の真実を知ってしまった今。


 ようやく現実と向き合う決意をした。
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