四百年の恋
 「え……。どういうことですか」


 美月姫は突然の事態に、混乱しているようだ。


 「……」


 「どうしてですか、突然……」


 「やはりこういうのはよくない」


 「……私が教え子だからですか?」


 「それもある」


 「もう卒業してるから、そんなの関係ないじゃないですか……」


 美月姫はすがるような目で、圭介を見つめる。


 「そうはいかない」


 その目を真っすぐに見つめ返すことができず、圭介は海を見ているふりをした。


 太陽はますます水平線に近づき、日没の瞬間が近づいていた。


 「卒業後はもう自由です。私を一人の人間として見てください。いえ、女として……」


 圭介の背中に、美月姫は想いをぶつける。


 「先生……!」


 そして背後から抱きついてきた。


 「私、先生が好きなんです……」


 美月姫は背後からきつく、圭介を抱きしめた。


 「先生が好き……」


 圭介を掴む美月姫の手の力が強まる。


 「離しなさい」


 「いや! 先生にも私を好きだって答えてほしい……!」


 「無理だ」


 「なぜですか。私が教え子だからですか? まだ子供だからですか?」


 「……」


 圭介が何も答えられずにいると、


 「先生、答えてください」


 美月姫は圭介を抱く腕を解き放ち、正面に回り込んだ。
< 602 / 618 >

この作品をシェア

pagetop