四百年の恋
 「先生、私を拒まないでください」


 美月姫は圭介に訴えかけた。


 「俺は教師だ。お前は生徒だ」


 「だから、今はもう卒業したんだから、無関係なのに・・・」


 美月姫は圭介の胸に飛び込んで来た。


 「私じゃ……だめですか?」


 最愛の真姫そっくりな姿と声に、圭介は未だ戸惑っている。


 「先生、私を抱いて」


 胸に頬を埋めたまま、美月姫は訴えかける。


 「大村、」


 「みつき、と呼んで!」


 美月姫は顔を上げて、圭介の目を射抜くように見つめる。


 「先生、いいえ……吉野さん」


 名前で呼ぶように求めておきながら、自分は「先生」と呼び続けるのは不自然だと感じ、美月姫も呼び方を変えた。


 「吉野さん……愛しています」


 潤んだ目で告げられて心が揺さぶられるのだが、圭介は必死でこらえた。


 そして、


 「お前は俺を愛してなどいない」


 冷たく言い放った。


 「え……?」


 「お前は清水とのつらい別れを経験した。その寂しさから逃れるために、俺を利用しているだけだ」


 そう断言した。


 「……」


 美月姫は言葉を失う。


 「俺は清水の身代わりじゃない。代用品でもない。もうこういうのは、やめにしないか」
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