四百年の恋
 「お前は何も、後ろめたさなど感じる必要はない。これは俺の自業自得なんだから」


 「そんな……」


 ……長年積み上げてきた夢への階段が、一瞬にして打ち砕かれて、絶望の底にいるはずなのに。


 「自業自得」


 そんな一言で片付けられるのだろうか。


 本当に、そんなに簡単に割り切れるのだろうか。


 真姫には信じがたかった。


 「それにしても屈辱だな。あいつに命を救われるとは。あいつが受け止めてくれなかったら、俺は死んでたかもしれないってさ」


 圭介は自嘲的に笑った。


 「一つ聞いていい?」


 「何だ?」


 「四階で吉野くんともみ合っていたはずの福山くんが、どうして一階で吉野くんを受け止めることができたのかな。階段を駆け下りたとしても、到底間に合わないよね」


 「そうだな。冷静に考えてみると、妙だな」


 「……」


 真姫は恐る恐る尋ねた。


 「だけど転落する前後のこと、俺はほとんど覚えていないんだ」


 圭介は当時のことを思い起こそうとする。
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