四百年の恋
***


 「好きだ、真姫」


 秋の割には、気温が高めの夜だった。


 食事した帰り道、通りすがりの公園。


 そこのベンチに腰かけて、しばし沈黙の後、突然告白された。


 「どうして私なんかを?」


 「理由なんてもはや分からない。ただ……ずっと前から君を」


 ゆっくり抱き寄せられ、そして重なる唇。


 月は出ておらず、秋の星座がどことなく物寂しい夜だった。


 キスをしていると、歯止めがきかなくなりそうで……。


 「ごめんなさい」


 真姫は福山から離れた。


 「あんなことがあって、私……。まだ気持ちの整理がつかなくて」


 真姫の言葉を受け、福山も体を離した。


 「ごめん。真姫の気持ちを考えずに」


 「少し時間をもらってもいい?」


 「時間?」


 「気持ちの整理がつくまで、ほんの少し」


 「いいよ。真姫が望むなら」


 福山はそっと笑った。


 端正な顔立ちが、どこか寂しそう。


 「400年も待ったのだから、今さら少々のことでは焦らないよ」


 「え?」


 「いや……。何でもない」


 以前の真姫だったら、つい流されてしまい。


 誘われるがままに、何もかも許してしまったかもしれない。


 だけど圭介があんなことになってしまい、真姫はどうしても罪悪感から逃れられずにいた。


 そして圭介のあの言葉。


 「近々、全てはっきりする」っていったい何だろう。


 同時に、真姫はそれが気になって仕方なかった。
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