四百年の恋
 「同姓同名か。福山も龍之助もそんな珍しい名前じゃないから、ただの偶然だろ」


 「だと思うのですが、僕なんか気になっちゃって……」


 「まさか若死にした昔の若さまが、化けて出て来たなんてありえないだろ」


 圭介はオタクの肩をポンと叩いた。


 「まさかそんなこと……ないですよね」


 オタクもだんだん心配になってきている様子。


 「次に福山さんに会う際には、ちゃんと両足があるか、確認したほうがいいかもしれませんね……」


 その時だった。


 「あっ、真姫!」


 真姫が入ってきたのに気が付いた圭介は、慌てて呼んだ。


 「おっとその前に、お前にこれを預けておく」


 圭介は手にしていたいくつかのA4サイズの紙封筒のうちの一つを、オタクに手渡した。


 「何ですか、これ?」


 かなりの厚みがある封筒だ。


 「いいか、これは重要な書類だ。俺の身に万が一の事があったら、学校や警察に届けてくれ」


 「はあ?」


 「それくらい重要なものだ。よろしく頼むぞ」


 「吉野くん!」


 オタクが呼び止めるのも聞かず、圭介は真姫を連れて教室を出た。
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