四百年の恋
 ……。


 「ちょっと。どこへ行くの?」


 足を引きずりながら、圭介は駆け足で廊下を走り抜ける。


 真姫も後を追う。


 「とりあえず、大学から早く逃げなければならない」


 「逃げる? なぜ? 理由を話して。それよりこっちは、玄関とは逆方向よ」


 真姫は走りながら聞き返す。


 「玄関はまずい。登校してくる福山に遭遇する可能性がある。見つかったらまずい」


 「福山くんに? ……どういうこと?」


 「とりあえず、脱出に成功してからだ。職員用通用門から外に出れば、すぐに駐車場だ。そこに俺の車がある」


 通常、学生は車での通学は禁止されているが。


 圭介は足のケガもあり、特別に車での登下校が許可されていたのだった。


 「うわっ」


 校舎を出て、中庭を通過して駐車場へと向かっていたその時。


 圭介は足が絡まり、転倒してしまった。


 「大丈夫!?」


 以前のような感じで走ろうと思っても、体が付いてこないのだ。


 手にしていた書類は、袋から外に飛び出してしまった。


 「悪化させたらどうするの」


 心配そうな声を出して、真姫は散らばった書類を拾い集めようとした時。


 「え……。何これ?」


 その中に写真を見つけた真姫はぎょっとした。


 そこには福山の写真が。


 「盗……撮?」


 明らかな隠し撮りだった。
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