四百年の恋
 そして一緒に散らばった書類は……報告書?


 「どういうこと? 何なのこれ?」


 真姫は疑いの目を、圭介に向けた。


 「……興信所の、調査結果だ」


 「興信所?」


 「探偵を雇ったんだよ!」


 「探偵ですって……?」


 真姫はあ然とした。


 「何考えてるの? 探偵を雇うなんて、お金かかるんでしょ」


 「貯金をはたいた」


 「なぜそこまで……。まさか、仕返しするつもりじゃ」


 弱みを握って脅したりなどといった形で、圭介は復讐を企んでいるのではないかと危惧した。


 「私怨じゃない!」


 圭介は真姫の言葉を遮った。


 「あいつは、ただ者じゃない。俺がこんな目に遭った直前のあいつの目、普通じゃなかった。思い出しただけでも恐ろしい……」


 「でも福山くんは、吉野くんを助けてくれたんでしょ? なのにどうして、探偵を雇って弱みを握ろうと?」


 「じゃお前は、あいつのことをどこまで知ってるんだ?」


 「えっ」


 「あいつの何もかもを、理解しているのか?」


 「……」


 そういえば。


 (福山くんと二人きりになっても、会話は適度な世間話ばかりで)


 彼の家庭環境や生い立ち、詳しい情報を真姫はほとんど知らずにいた。
< 79 / 618 >

この作品をシェア

pagetop