四百年の恋
「俺はあいつが危険な男だと直感した。だけど根拠がない。だから調べたんだ。俺が直接やって、失敗したらまずい。だからプロの手を借りて」


 「危険な男だなんて大袈裟な……。それで何か分かったの?」


 真姫は半ば呆れた様子で尋ねた。


 「分かったのは……あいつが偽の住民票を用いて、大学に入り込んでいるということ」


 「偽の住民票?」


 「まず奴は、行方不明男性の住民票を、何らかの手段で乗っ取って」


 「……」


 「そして市内の病院に入院中の寝たきり老人と、無許可で養子縁組。そうやって福山龍之介という人物になりすまし、この大学に潜入した」


 「……ならば、福山くんは何者なの?」


 「探偵の調査で、判明したのはここまでだ。この先は今回の調査では、突き止められなかった。だからここからは、俺の推測」


 「うん……」


 「あいつは、ロシアン・マフィアだ」


 「ロシアの?」


 真姫は絶句した。


 「お前、今朝のニュース見たか? 函館港に出入りするロシア船の船員が、市内で中古車を盗んで、ロシアに密売しようとしていた話」


 「知ってるけど」


 「それは当然、ロシア人船員たちが独自でやっている犯罪ではない。背後にはマフィアが存在するんだ」


 「……」


 「だから福山は、ロシアのマフィアなんだ。昼間は大学生のふりをして、周囲を偽っているんだ」
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