四百年の恋
 「証拠はあるの?」


 「いや、まだ……」


 「どう見ても福山くんは、ロシア人に見えないけど?」


 「極東には、日本人と区別が付かないような民族もいるんだぞ」


 「あのね……。第一マフィアな人が、こんな大学に入り込んで、私たちと一緒に授業を受ける必要なんてあるの? そんなことありえるわけないじゃない」


 「それが大有りだ。マフィアは中古車の他、人身売買もやってるって噂だ」


 「人身売買?」


 「きっとお前は、福山に狙われてるんだ。目を付けられている。このままならお前はあいつに、ロシアに連れて行かれるぞ!」


 「ねえ、落ち着いて。冷静に考えるとそんな話、辻褄が合わないわよ」


 「だめだ、ゆっくり相談をしている時間はない! とりあえず福山に見つかる前に、早く大学から」


 「吉野くん」


 圭介が真姫の手首を掴んで、再度駐車場に向かおうとしたその時。


 「楽しそうに、何の話?」


 背後から言葉をかけられ、圭介はぎょっとした。


 振り向くと。


 「福山……」


 無表情で福山がそこに立っていた。
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