四百年の恋
 「さっきから俺の名前が、何回か聞こえてきたけれど。聞きたいことがあるんなら、直接聞いてくれればいいのに」


 「ふ、福山くん、あのね」


 「真姫、だめだ!」


 真姫は先ほどのロシアンマフィア云々の件を、思い切って福山に直接聞いてみようとしたのだけど。


 危険を感じた圭介は、真姫の口をふさいだ。


 「吉野」


 真姫と一緒にいる圭介を不快に感じたようで。


 福山は鋭い目線を圭介に投げかける。


 「真姫が嫌がることをすれば、ひどい目に遭うっていうこと。前回で身に染みたんじゃなかったのかな?」


 「何だと」


 「真姫から離れろ」


 なぜだろう、あの時のことは記憶が曖昧なはずなのに。


 心の底から湧き上がる恐怖に、圭介は立っているのがやっとだった。


 「真姫、こっちへおいで」


 次に福山は、真姫を自分のもとへ誘った。


 だが真姫もまた、戸惑いを隠せずにいた。


 「どういうつもりなんだか」


 地面に落ちたままの自分が隠し撮りされている写真を、福山は拾い上げた。


 「影でコソコソ人のことを探るのは、あまりいいことではないな」


 圭介の胸元へと、福山は腕を伸ばした。


 恐らく胸ぐらを掴むつもりだったのだろう。


 ところが。


 「うわっ!」


 圭介の胸元に触れた途端、電気ショックを受けたように福山は離れた。
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