四百年の恋
 「まさかお前、吸血鬼? この十字架が怖いのか」


 圭介は首からネックレスを外し、福山に見せ付けた。


 「……!」


 やはりそれが怖いようで、福山は顔を背けた。


 「お前、化け物か! かどわかし目的で、真姫に近づいたのか?」


 十字架で脅しながら、畳み掛ける。


 「答えろ!」


 十字架を押し付け、回答を強いる。


 「よ、吉野くん。もうやめたほうが」


 福山の苦悶の表情に耐えかねて、真姫は制止した。


 「真姫は向こう行ってろ。俺が今、こいつの正体を暴いてやる」


 その時。


 「吉野くーん」


 同じクラスのオタク男が、駆けつけてきた。


 先ほど圭介の様子がおかしかったので、心配して後を追ってきたらしい。


 静香の姿も見える。


 「真姫、いったいこれは。……あっ!」


 駆けつけた麻美も、真姫の向こうにいる福山の異変に気が付いた。


 「みんな近づくな! こいつは人間じゃない! その証拠がこれだ!」


 圭介は再度、福山に十字架を見せつけた。


 福山は耐え切れず、顔を背け……。


 さらに加速度を上げて、朽ち果て始めた肉体。


 闇の中に君臨する月のような美貌が、損なわれていく。
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