白雪姫の願いごと
「いいか、勘違いするなよ……。俺はこのまま放っておくとコイツが風邪を引くから、それが気になるだけだからな」
俺は自分にそう言い訳をしながら、彼女を優しく揺さぶった。
しかし、やはりというかなんというか、彼女が起きる気配は全くない。
それを確認した俺は、彼女の柔らかい身体を抱き寄せて半身を起させると、そのまま膝の下にも手を入れて一気に持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこ、というやつだ。
壊れそなほど華奢で柔らかい体に緊張する俺の鼻先を、爽やかなシャンプーの匂いがくすぐっていく。
(ったく、俺も男なんだぞ。こんな無防備なマネしてんじゃねぇよ)
心の中そうわざとらしく文句を言いつつ、彼女を寝室へと運び込む。
そのままそっと布団をかけてやり、俺は無事に彼女の部屋から出ていった。
「……よし、今日も襲わずに済んだ」
俺は欲望に耐え抜いた自分を自分で褒めつつ、ゆったりと自分の部屋へ戻った。
そういえば、明日の学校帰りには愛理の友人が来るんだったか。
確か人探しの依頼だったはずだ。浮気調査の依頼よりはマシかな、と思いながら俺は自分のベッドへと寝転がる。
(なんにせよ、無事に依頼を達成できればいいんだがな)
俺はそんなことを考えながら、静かに目を閉じたのだった。