白雪姫の願いごと
◇人捜し
「父を捜してほしいんです。お願いできますか?」
翌日の午後5時。
愛理に連れられてやってきた今回の依頼人・堀川葉月は、面談用の椅子に座るなりそう切り出した。
それを聞いた雅彦は「期待に応えられるよう、できる限りの事はしましょう」と頷くと、詳しい話を聞き始めた。
「私が捜してほしいのは、大野誠《オオノ マコト》。私の実の父親で、生きていれば今年で54歳のはずです」
「……捜索の参考になりそうな写真などは持っていますか?」
「いえ、ないです……」
「じゃあ顔の特徴は?住んでいる場所に心当たりは?」
「それも、ちょっと……」
「ふむ。そうですか」
そう言うなり、雅彦は何かを考えるように黙り込んでしまった。
そんな彼の様子を見た葉月は、
(あぁ、また今回も断られるのかな……)
とボンヤリと思った。
――実は、この『東宮寺私立探偵事務所』に来るまでにも、葉月は何件かの探偵事務所に顔を出していた。
そして、そのどの事務所にも捜索を断られていたのだ。
『あまりにも捜索する材料が』少ないから、と。
(今回も、また断られるのかな……)
葉月が不安に瞳を揺らしたころ、不意に顔を上げた雅彦がこちらを見つめてきた。
そして、じっとこちらの瞳を見つめたまま、ゆったりとした口調で言葉を紡ぐ。
「間違っていたら申し訳ないんですが。もしかして……今のご家族に何か不幸でも?」
それを聞いた瞬間、私は反射的に自分の身を強張らせた。