白雪姫の願いごと
(この人、どうして……!)
私は比較的物覚えのいいほうだ。だから、彼とは会うのも喋るのも初めてだと分かっている。
さらに私は、『この事を大学の誰にも言っていない』。もちろん、愛理にもだ。
なのに、どうしてこの男はそこまで知っている――?
思わず戦慄していると、隣でおとなしく聞いていた可憐な少女――愛理が私の代わりに疑問の声を上げた。
「ん?なにマサ君、どういうこと?」
愛らしく首を傾げる彼女に、彼は冷静そのものの顔で答える。
「なに、簡単なことだ。先ほどの依頼人――堀川さんの口ぶりから察するに、恐らく彼女は幼いころ、少なくとも父親の容貌さえ曖昧になるほど以前から両親と一緒に暮らしていないようだな。
苗字まで違うあたり、もしかしたら養女として親戚に引き取られでもしたのかもしれん。
その上、捜索対象の生死も分からず、写真も住んでいる場所の心当たりもないところを考えると、ずっと絶縁状態が続いているはずだ。
違いますか?」
「そ、その通りです……」
その推理力に驚いて思わず固まっていると、「でも、」と愛理が口を開いた。
「たとえばその推測が当たっていたとして、どうしてそれが葉月ちゃんの家族の不幸に繋がるの?」
私もそれが気になっていた。思わず愛理の言葉にウンウンと頷いて同意していると、雅彦はなんでもないことのように口を開いた。
「必要性、だ」
「「……必要性?」」