白雪姫の願いごと




「そう、必要性だ。――今まで連絡を取らなくても何の支障もなかった相手をわざわざ探し出して会わなければならないのは何故だ?それは、『そうする必要がある』からだ。


そう考えたから、俺は堀川さんに質問を投げかけたんだ。『なにか身内の方に不幸な事がありましたか』とな。


少々乱暴な推測ではあるが、そうすればわざわざ今まで連絡を取らなかった相手を探し出さなければならなくなった理由も納得がいくし、なによりその目の下のクマの意味も、妙に切羽詰ったその雰囲気も分かるからな」



その言葉を聞いた愛理は、まじまじと葉月の目元を見つめた。


そう言われてみれば、化粧でうまく隠してはいるものの、うっすらと目の下にクマがあるのが確認できた。



「ご、ごめんね葉月ちゃん。私、ぜんぜん知らなくて……」


「うぅん、いいの。むしろ、誰にも言ってないはずなのにそれに気付いた探偵さんが凄いのよ」


「……これくらいは普通です。まだ依頼も遂行できていないのに褒められる要素なんて、……むぐっ!?」


「あーごめんね葉月ちゃん!この人アレ、アレだから!別に上から目線な訳じゃなくて、素直に褒め言葉を受け取れないだけだから気にしないでっ!」



聞き方によっては失礼にも聞こえる言葉を聞いて慌てて雅彦の口を手でふさぐ愛理に、葉月は思わずクスクスと笑った。


やがて笑いが収まると、葉月は姿勢を正して静かに口を開いた。



「まぁ、おおむね探偵さんの言うとおりです。私は小さな頃、母方の叔母さんの家に養子として育ったのですが……実は先日、その家で火災が発生し、私以外の家族が全員焼死してしまったんです……」


「……っ!」



その言葉を聞いた愛理は、衝撃の告白に思わずヒュッと小さく息を吸い込んだ。




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