白雪姫の願いごと
私は彼女のほうへ向き直ると、ジトッとその目を見つめ返した。
「あ、と!私のこと『妖精』なんて気持ち悪い呼び方しないでって言ったじゃん!!」
「えー?だってみんなそう呼んでるし。実際可愛いし」
「『大学のアイドル』に言われても嬉しくないですから」
「いやいや、本当だってばー」
「っていうか、それとこれとは関係ないでしょ!恥ずかしいんだってばそのあだ名!」
私はそう言うと、困ったように眉を下げる彼女からわざとらしく顔をそらして見せた。
――実は私には、『図書館の妖精』なんていう変なあだ名がついている。
暇さえあればずっと図書館にいるため、最初は「本の虫」とか「重度の活字中毒」とか言われていたのだが、いつの間にかその変な名前が大学中に広まっていたのである。
ぜひ最初に考えたヤツは名乗りをあげてほしい。
大学生にもなって『妖精』なんていう中二全開のあだ名をつけたことを後悔させてやる!
……などと考えていると、ふと顔を上げた葉月が私に声をかけてきた。