白雪姫の願いごと
「ねぇ、葉月ちゃん。たしか葉月ちゃんのおうちって探偵さんだったよね?」
「だから妖精じゃ……あー、もういいや。で?その通りだけどどうかした?ご依頼なら喜んで引き受けるけど」
「本当!?忙しくない?大丈夫?」
「むしろ暇すぎて収入のなさに困ってるくらいだからダイジョーブ!!」
「そう?じゃあお願いしようかな……?」
「ぜひ!浮気調査もお任せだよ!!」
「うーん、そういう用件じゃなくてね……」
そう言って彼女は口をつぐむと、数瞬だけ視線を彷徨わせ、ゆっくりと顔を上げた。
――その時の彼女の顔は、今でも忘れられない。
静かな、しかし確かな意思を持った強い瞳。
普段はぼんやりしている彼女にしては違和感のある、それはとても硬い表情だった。
やがて、彼女は意を決したように口を開く。
「実は、私の父を探してほしいの」
――そしてそれが、すべてのはじまりだった。