彩りを吐いて君はゆく


それからしばらくして、春がきた。先輩は第一志望の大学に見事合格し、最後は笑って卒業していった。

最後の最後まで、私は先輩に、何も言うことが出来なかった。ありがとうもごめんなさいも言えないままで、先輩は遠くへ行ってしまった。


「さよなら」


にっこり笑った先輩の最後の言葉の意味は、わかりたくないと思った。卒業するからさよならなの。それとも、もう二度と会えないから、さよなら、なの。

それさえ聞けないままで、なんにも言えないままで、私たちはさようならをした。


私は、絵を描くことが出来なくなった。
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