How much?!


予定より1時間遅く、目的地の虹ヶ丘店に到着した。

すぐさま事務所へ行き、社員の男性に挨拶を済ませると。


「わざわざすみません」

「いえ。それより、水内店長は……?」


紺野部長から連絡が入っていて、隣り町の山岡店の店長(水内さん)が、鍵の保管を引き受けてくれる事になっている。

けれど、店内にも事務所にも彼の姿は無い。

男性社員の顔色を窺ってみるものの、嫌な予感しかしないのだが、気のせいだろうか。


じーっと鋭い視線を向けていると、


「本当にすみません!あと1時間くらいかかるそうで……」

「えっ………」


言葉を失うとはこういう事を言うのだろう。


彼に文句を言った所でどうにもならない。

しかも、夕方の忙しい時間帯だ。

どこの店舗だって人員を確保するのは至難の業。


私は苦笑しながら、小さく頷く。


「分かりました。水内店長がいらっしゃるまで、ここで待たせて頂きます」

「………すみません」

「店内が忙しいでしょうから、どうぞお構いなく」

「………ホント、すみません!」


男子社員は事務机の上にペットボトルのお茶を置いて、店内へと駆けて行った。


はあぁぁ~~。

今日は本当にツイてないなぁ。


ボーっと、店内監視モニターを眺めていると。


トュルルルルッと外線電話が鳴り出した。

事務所には他に誰もいなくて……。

仕方なく、電話に出る。


「お電話有難うございます。スーリール虹ヶ丘店です」


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