How much?!


身体に軽い衝撃を受けた。

けれど、それよりももっと重要な事がある!


「ちょっと、待ちなさいよォーッ!!」


肩から掛けていた鞄をひったくられてしまった。

すぐさま犯人を追うが、逃げ足が速い!


「誰かぁーっ、泥棒でぇーすッ!!」


必死に叫びながら猛ダッシュするが、21時過ぎの田舎の駅前には人の気配が殆ど無い。

しかも――――。


「痛っ……」


薄暗い路地を駆けていた私は歩道の段差に気付かず、足を捻ってしまった。

さすがに7㎝のヒールで追いかけるのには無理がある。


痛みと悔しさと恥ずかしさと……。

私はアスファルトの上にへたり込んだ。


もうッ!!

何で今日はこんなにツイてないのよっ!!


沸々と湧き起こる怒りもプラスされて、横を通り過ぎる車の視線など気にしていられなかった。



どうしよう。

お金は無いし、乗車カード(電子マネー)も無い。

タクシーを拾いたいけど、ど田舎の駅前にはタクシー乗り場さえ無い。


深々とお尻が冷えて来て、痛みを堪えて立ち上がる。

そして、無意識にヨレヨレと駅に戻り始めた。


駅員さんに事情を説明して、お金を借りられるかな?

そんな事を考えながら、片足を引き摺るように歩いていた。


手も悴み始め、心身ともに凍えそうになる。

コートのポケットに手を突っ込むと……。


「えっ?」


指先に硬いモノが当たった。

すぐさまそれを取り出し、笑みが零れる。


愛用しているスマホちゃんだ!


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