How much?!
「……………**駅です」
「は?…………**駅って、△△県だよな?」
「………はい」
「お前、1人か?」
「………はい」
「俺に電話をして来たって事は、帰る金が無いんだよな?」
「………はい」
「解った、直ぐ向かう」
「………すみません」
「携帯の電池はまだあるか?」
「………はい、まだあります」
「そうか。とりあえず、一旦切るな?」
「あっ、はい」
彼はそれだけ言うと、電話を切った。
彼が迎えに来てくれる。
こんな遠く離れた、ど田舎に。
しかも、22時になろうとしている時間に……。
申し訳ない気持ちと嬉しさで何とも言えない複雑な心境。
私は携帯を握りしめ、夜空を見上げた。
そこには煌々と輝くオリオン座が……。
大晦日に見た夜景には劣るけど、きっと今日のオリオン座も忘れられそうにないな。
両手を口元に当て、ハァ~と息をかける。
ますます悴む指先。
携帯を握りしめる手も震え出した。
すると、手中の携帯が震え出し、ディスプレイには『麻生大和』と記されている。
震える指先でフリックすると。
「大丈夫か?」
「………はい」
“もしもし”さえ省略した事に彼の優しさが溢れている。
「駅前近くに入れるような店はあるか?」
「………無いみたいです」
「1軒も?」
「小さなお店は既に閉まっていて、怪しげなお店が1軒あるだけです」