How much?!


顏にかかる陽ざしに眩しさを感じ、瞼をゆっくり開ける。


いつもと違う室内に一瞬ドキッとするものの、昨夜の出来事が走馬灯のように脳裏に浮かび、気を落ち着かせて隣りに視線を移す。

……いない。

彼は既に仕事に出掛けたようだ。

微かに彼がいた痕跡がある。

自分の身体を覆うように……彼の残り香が。


重い身体を起こして、リビングへと向かう。

すると、テーブルの上に1枚のメモが置かれていた。


- - - - -


よく眠れたか?

熱が下がっても病み上がりだから、無理するなよ?

お粥を作っておいたから、お腹が空いたら食べるといい。


鍵が無いだろうから、俺のを置いて行く。

ドアの横にあるメーター機の中に入れればいいから。


- - - - -


意外にも綺麗な字で綴られたメモ。

殆ど眠れて無いだろうに、お粥まで作ってくれた。


彼の優しさが滲み出ていて、思わず目頭が熱くなる。



ふと視線が留まったメモの端に、小さな文字が記されている。

そこには―――――。


『△9,640円+α』と記されていた。


不意にメモ用紙を裏返すと………。


「あっ……」


そこには、昨夜私に費やした分の高速代とガソリン代が記されていた。

恐らく『+α』とは、宿泊費と食事代のほか、薬も含めた看病代が込められていると思う。


一見ケチ臭い男に思えるが、彼の優しさを知ってしまった私には、照れ隠しとしか思えなかった。



「麻生大和……か。結構イイ男じゃん」

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