How much?!


「彼が何を好きなのか、彼がどうして欲しいのか、彼が何を考えているのか。……そういう事を考える時って、自分に正直にならないと何一つ行動に伴わない気がするんですよね」

「………ん」

「先輩が賭けに負けて、女性として大事なモノを失うのは断固回避させたいですけど。逆を言えば、勝つためには……彼の事を真剣に考えたりしないと彼の心は絶対手に入れられないと思いますよ?」



彼女の言う通りだ。


『麻生大和』という1人の男と正面から向き合わない事には、惚れて貰うどころか、好意を寄せて貰う事すら危うい。

彼に好かれるには、まず、彼好みの女にならない事には話が始まらない。


そう考えると、彼がどんな人物なのか……全く以て意識していなかった。


ナルシストで俺様で、その上かなりの毒を吐く。

でもこれは彼の表面な部分であって、本当の彼では無い。


私だって仕事は一切妥協しないし、男だろうが不真面目な奴には一喝入れる。

でもこれだって、私の表面でしかない。


実際は恋する事に臆病で、時々生きる事すら辛いと思う時もある。

娘の倖せを願う両親の期待には応えてあげたいけど、私には恋愛は向いてない気がして……。


気が付けば、30歳まであと数ヶ月。

この歳になって『恋愛』がどういうものか教えてくれる人なんて、志帆ちゃんくらいしかいない。



はあぁぁ……。

麻生さんの本当の姿……か。


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