How much?!


「いいですか~?先輩」

「ん」

「麻生さんは、先輩に合鍵をくれましたよね?」

「ん」

「『ハンデをくれてやる』という言葉は鵜呑みにせず、彼自身に目を向けたら、彼は最初から先輩に歩み寄る機会を与えてくれてる事になりますよ?」

「………」

「先輩が自分の為に何をしてくれるのか、どこまで俺を知ろうとしてるのか。彼はそれを見る為にも合鍵をくれたと思う事は出来ませんか~?」

「………」


志帆ちゃんの言いたい事は解った。

彼は最初から、私の本当の姿を見ようとしている。

だから、私に合鍵を渡したんだ。


私も彼の本当の姿を見ようとするなら、志帆ちゃんの言うように鍵を渡してみるのもいいのかもしれない。

かなり大きな代償を生むけど。


だって、女性の家の合鍵を家族でも恋人でも無い人に渡すだなんて……。

常識的に考えたら有り得ない。


だけど、彼は……。

言葉では言い表すのは難しいけど、おかしな事をするような人じゃ無い気がする。

盗みに忍び込むとか、鍵を第三者に手渡すとか、そんな事はしないと思う。



昨夜の彼がそう思わせるのか。

それとも、職場が同じだからそう思えるのか。

言葉では表現し辛いけど、とにかく渡しても悪用するようには思えない。


「どうです~?鍵、渡せそうですか~?」

「………ん」



これが、彼の事を知る良いきっかけになればいいかな?


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