How much?!
不意をつくとはこういう事なのかもしれない。
彼が美味しそうに食べてない理由が漸く理解出来た。
顏では笑顔を作りながら、内心苛つきを覚え始めていると。
「この胡麻和えの胡麻は、市販のすり胡麻か?」
「あ、はい」
「どうりで。白ごまを炒れとは言わないが、市販の炒り胡麻を擦って作った方が胡麻の香りが楽しめる」
「………そうですね」
「それに、このふろふき大根の味噌だれは合わせ味噌だよな?」
「はい、西京味噌と八丁味噌を合わせてますが、ノーマルの白味噌が良かったですか?」
ここまで来ると、バッサリ斬って貰った方が清々する。
自ら首を差し出すような言葉を向けると。
「いや、コクが出てて旨いよ。合わせ味噌もイケるもんだな」
「……ッ?!」
彼の言葉に驚いていると、
「でも、風味が足りないよな。柚子の皮でも刻んで添えてあったら完璧なのに」
「………」
「それに、この浅漬け。これ、塩昆布を使ったのか?」
「………はい、お気に召しませんでした?塩昆布と酢で味付けしてあります」
「ん~、昆布の旨味も出てて結構旨い」
「で、何が足りないんですか?」
「そうだなぁ、色味が少し足りないか?キャベツの白、胡瓜の緑、昆布の黒。強いて言うなら人参の赤があれば見た目も楽しめたよな」
「………そうですね」
作り笑いも限界に近づく。
私は手にしていた箸を置き、気を落ち着かせる為、お茶を口にした。
そして―――――。