How much?!
最後の1つになってしまった“杏仁豆腐”
口直しにと思い用意したけど……。
彼はスプーンですくったそれをゆっくりと口へ運ぶ。
そんな彼をじっと見つめるのは悪いと思い、自分もそれを口に運んだ。
すると、
「ん~、これ旨いな」
「へ?」
「結構イケるぞ」
「………ホントですか?」
「あぁ、マジで旨い。口の中がリセット出来ていい」
ちょっと、何なのよ……。
そんな反則的な笑顔で言われたら、胸が反応しちゃうじゃない。
美味しそうに食べる彼。
私、今日一番ドキドキしてるかも。
『旨い』と言ってくれた杏仁豆腐を口に含んでも味なんて分からないほど、私は動揺していた。
すると……。
「これ、おかわり無いよな?」
「えっ?」
おかわりって、追加って事よね?
もしかして、そんなにも美味しかったの?
思わず、自分の手元に視線を落とす。
これが、そんなに……彼の口に合っただなんて。
マジマジと手元の杏仁豆腐を見つめていると。
スーッと黒っぽいモノが目の前に現れたかと思ったら。
「ッ?!」
「ん~、旨いっ!」
杏仁豆腐が乗っているスプーンを持つ私の手を彼が掴んだ。
そして、スローモーションのように……杏仁豆腐は彼の口の中へ消えてしまった。
あまりの突然の行動に唖然としていると、
「ご馳走さん」
彼は、誰もが蕩けてしまいそうな極上の笑みを浮かべた。