How much?!


完全に彼のペースに呑まれてしまっている。

不本意にも胸は騒ぎ出すし、頬も熱を帯びている。

食事をして、体温が上がったからじゃ………ないよね?


彼の視線を感じながら、残りの杏仁豆腐を食べ終えた。



食器を片付け、食後の珈琲を淹れていると。


「なぁ、小町」

「はい?」

「俺、珈琲は酸味の少ないのがいい」

「………………はい、了解です」


やっぱり、何かしら言わないと気が済まないようだ。

黙って美味しそうに戴くという芸当は持ち合わせていないらしい。


彼のオーダー通りに珈琲を淹れ、リビングに戻る。

そして、少しドキドキしながら珈琲を差し出す。


彼はカップを手にして目を閉じた。

香りを愉しんでいるようだ。

そして、ゆっくりと一口、口に含むと。


「ん、旨い。この間のより、格段に旨い」

「………そうですか、それは良かったです」


手放しで喜べないのは、私の心が荒んでるから?

彼が次に何を言うのか、それが気になって、珈琲を味わえない。

せっかく美味しく淹れた筈の珈琲が台無しだ。

溜息まじりにカップに口をつけると。


「器にももう少し拘ったら、完璧なのにな」

「………」


あぁ、そうでしょうねぇ!!

そこまで気にしてなくて、申し訳ありませんねッ!!

手にしたカップの中の珈琲が波立っているし、頬がヒクヒクしているのが自分でも分かる。


コイツ、一発ぶん殴らないと分からないのかもしれない。


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