How much?!
時計に視線を向けると、22時を過ぎようとしている。
「あの、麻生さん」
「ん?」
「明日もお仕事ですよね?」
「いや」
「え?」
「俺は休みだけど、小町は仕事だろ」
「あっ、はい」
「早番か?」
「………はい」
お休みなの?
それって、公休日って事だよね?
意外な答えに唖然としていると、
「そろそろ遅いから帰るな?」
「え?」
「明日、仕事なんだろ?」
「………はい」
私を気遣ってくれているようだ。
彼は黒いカーディガンの上にスタッフジャンバーを羽織ろうとしている。
「あのっ、麻生さん!」
「ん?」
帰る前に渡さないと!
私は急いでドレッサー横に置いておいた品物を手にして……。
「あの、これ……」
「………」
「遅くなりましたけど、先日のお礼です」
緊張しながら、ネクタイがラッピングしてある箱を差し出した。
「………貰っていいの?」
「はい。お気に召すか分かりませんが、要らなかったら燃えるゴミにでも出して下さい」
「………サンキュ。んじゃあ、遠慮なく頂くな?」
「はい。あと、これ……」
「ん?」
私はもう1つの箱を差し出す。
「今日はバレンタインなので……」
「これ、義理?それとも、本命?」
「えっ………?」
「いや、いい。何でもない」
唖然としている私の手から手持ち箱を受取った。