How much?!
「髪はさほど傷んで無かったけど、サービスで念入りにトリートメントしておいたから」
「えっ?あ、ありがとうございますっ!!」
鏡越しに視線が向けられ、艶々になった真っ直ぐな髪に指先を通す将星さん。
自分が施した出来に満足げに笑みを浮かべ、私の肩に手をポンと乗せ、そっと耳元で囁いた。
「きっと彼、我慢出来なくなるよ」
「へっ?!」
彼の言葉に驚き、鏡越しに彼をじっと見つめ返すと。
「触れたくて、無意識に指先が優しく触れる筈だから」
「ッ?!」
「おっと、そういう顔は彼の前だけにしておきなね?」
「………っ」
「楽しんでおいで」
優しい声音で囁かれてしまった。
マダムに人気なのも分かる気がする。
「お疲れ様でした~」
綺麗にお辞儀をする彼に会釈して、店を後にした。
麻生さんは彼氏じゃない。
しかも、将星さんが言った『触れたい』って、髪の事だって解ってるのに……。
脳細胞が勝手に自動変換しちゃう。
もう~~ッ!
私、変態みたい!!
何1人で変な妄想してんの?
ホント、馬鹿みたい。
昼食用にサンドイッチを購入して、帰路に着いた。
少し早めにお風呂に入り、今日こそは!と息巻いて準備を施す。
彼好みであろう『ナチュラル&エレガントクール』に!!
志帆ちゃんにアドバイスして貰った感じの服に着替え、鏡で最終チェック。
ん? あれ??
唇が少し乾燥してるかな?