How much?!
グロスを施す前の唇を指先でなぞってみる。
少しカサカサとしてる感じ。
私はキッチンへ向かい、蜂蜜とラップを手にしてドレッサー前に腰を下ろす。
唇に蜂蜜を乗せ、その上からラップで保湿を施す。
急場凌ぎはこれに限る!
数分置いてラップを取ると、ぷるぷるの唇の完成♪
後は大丈夫だよね?
約束の時間まで大分あるけど、遅刻をしたら何を言われるか……。
私はグロスを塗って、鞄を手にして自宅を後にした。
約束の時間より20分も早く待ち合わせ場所に到着した私は、iPodで音楽を聴き始めた。
10分程すると、見慣れた車が少し離れた所に停車した。
私はiPodを鞄に収め、その車に向い歩き出した。
すると、その車から相変わらず無駄にイケメンの彼が降りて来た。
通りを行き来する人がいる為、大声を掛ける訳にも行かず、少し早歩きで近づくと。
急に突風のように強い風が吹き付けた。
私は目をギュッと瞑って風をやり過ごして、乱れた髪を整えようとすると。
「えっ?」
彼が直ぐ横を通り過ぎようとしていた。
私に全く気付いていないようで……。
私は咄嗟に、真横を通り過ぎた彼の腕を掴んだ。
当然のように驚き振り返る彼。
自然と絡み合う視線。
「麻生さん」
「ッ?!………小町か?」
「………はい」
私の声で漸く理解出来たようだ。