How much?!
ここが薄暗いから?
髪型が違うから?
私だと気付くのに時間が掛かった彼。
ゆっくりと彼の腕を離すと、間を詰めた彼。
直ぐ目の前から物凄く凝視されている私。
恐らく髪型が変ったから、何て毒を吐こうか考えているに違いない。
「日本人形みたいで不気味ですか?」
自虐ネタとも思える言葉を向けると、
「いや、似合ってんじゃねぇか?」
「えっ?」
思わず彼の顔を振り仰いでしまった。
だが―――――。
「それ、チャンピオンベルトか?」
「はっ?」
意外な褒め言葉に気を良くしたのも一瞬で、次の瞬間には地獄に突き落とされた感じがした。
細身のコートのウエスト部分にコートに付属しているベルトで巻いている私。
ゆっくりと視線を落とすと、このコートのワンポイントでもある少し太めのベルトと少し大きめなバックルが目についた。
………これが、チャンピオンベルトって事?
見ようによっては見えなくはないが……。
次第にムカムカと怒りが込み上げて来た。
この男は、何かしら難癖をつけないと気が済まないらしい!
ホント、ムカつくッ!!
キッと睨みを利かすと、彼は長い腕をスッと伸ばして来た。
「ッ?!」
「俺の為にストレートにしたのか?」
「…………そうだと言ったら?」
彼は指先を髪に這わせ、優しく撫で上げてゆく。
その繊細な動きに不本意ながらも鼓動が跳ね上がってしまった。