How much?!


車に乗り込みシートベルトを締めると、車は緩やかに発進した。


「あの」

「ん?」

「今日はどこに行くんですか?」


私達がこうして頻繁に会うようになったのには訳がある。

元々マーケティング部にいた彼が今は食品部門のバイヤーをしている事もあり、紺野部長からの指示で、地場調査をする事になったらしく。

こうして恋人同士を装ってあちこちの店舗を廻る事になったのだが……。


「今日は仕事抜きで」

「え?」

「だから、今日は完全にオフで」

「…………えっ」

「何その反応。もしかして、仕事じゃ無かったら嫌だって言いたいのかよ」

「べっ、別に………そんな事言ってないじゃないっ」

「フッ、態度がそう言ってんぞ?」

「ッ………」


完全にオフって、何?

それじゃあ、本格的なデートじゃない?

さっきのアレだってまだ気になってるのに……。

そんな事言われたら、余計に変に気を遣うじゃない!


どうしていいのか分からず、無意識に視線を窓の外に向けると。


「寒くないか?」

「へ?………あ、はい、大丈夫です」


もうぉ~~ぉ~~ッ!!!

何、この会話!?

今日の麻生さん、絶対……変だ!!


本人の意思とは関係無く心臓はトクントクンと小躍りしている。

そんな事を悟られまいと、真っ直ぐな長い髪で運転席側を視界から隠して、静かに窓の外を眺めていると。


―――――ッ?!!


< 154 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop