How much?!
「小町、珈琲」
「………はい」
何、これ。
完全にカレカノの会話じゃない?
しかもここ、叔母様のお宅だよ。
あぁ~考えるのやめやめ!
考えるだけ無駄な気がする。
私は珈琲を淹れる為、キッチンへ。
彼好みの酸味の少ない珈琲を淹れ、再びリビングに戻る。
「はい」
「サンキュ」
長い脚を組み、ソファの背もたれに身体を預けながらカップに口を付ける彼。
そんな彼を横目に盗み見していると、
「惚れたか?」
「へ?」
「フッ、あまりにもカッコ良くて見惚れるだろ」
「ッ?!はあぁ~~ッ?!何言ってんの?頭、大丈夫~?」
ナルシストは今日も健在のようだ。
盗み見がバレていただなんて……。
私はあからさまに視線を外し、夜景を楽しむ事にした。
いつの間にか照明も常夜灯に変えてあり、窓から望む景色は宝石箱みたいに輝いている。
どれくらいの時間、静かに夜景を眺めていたのだろう?
手元のカップの中には珈琲の影すらない。
視線だけ隣りに向けながら、そーっとカップをテーブルに置く。
それでも、彼は微動だにせずじっとしている。
もしかして、………寝てるの?
そう言えば、先日、春彼岸が終わるまでは忙しいと言ってたっけ。
不意に脱いだコートが視界に入り、彼に掛けてあげようと手を伸ばすと。
ッ?!!
またしても、ふわりと髪に伝わる彼の指先の感覚。
頭頂部からゆっくりと降下して行き、首筋まで到達した指先は………。