How much?!
「何、この唇」
「へ?」
「すっげ、プニプニしてんだけど」
「……っ」
至近距離から無駄に色気のある視線が唇に注がれる。
出掛ける前に急場凌ぎで施したリップパックが、こうも威力を発揮するとは思ってもみなくて……。
「俺にキスして欲しくてワザとしてんの?」
「はっ!?っんな訳無いでしょっ!」
「フッ、どうだか」
嘲笑う顔も憎らしいほどにカッコイイ。
目に毒なイケメンフェイスに煽られ、思考が完全に稼働拒否した。
すると、私の手を掴んでいた彼の手が、ゆっくりと這い上がって行く。
直に触れている訳でもないのに彼の手の行方を、身体が敏感に察知してしまう。
ホント、……悔しいほどに。
這い上がった指先は耳の少し上辺りでピタリと止まり、優しく髪を梳き始めた。
あまりの心地良さに、自然と瞼が下がってゆく。
「髪」
「……へ?」
「何で、ストレートにしたんだ?」
「…………答えたくないと言ったら?」
「フッ、生意気だな」
髪を優しく梳いていた指先が少し乱暴に地肌を這う。
そして、グッと後ろ首を引き寄せた。
「俺を誘惑しようなんて、100年早ぇーよッ!」
「ッ!!」
威圧感のある声に委縮すると、私の耳元に唇を寄せ……。
「俺をその気にさせたいなら………もう少し短めがいいぞ?」
「んッ?!!!」
彼は艶のある声で囁きながら、スーッと指先をスカートの裾から滑り込ませた。
そして―――――。