How much?!
悶々としたまま一夜を明かした。
午前中は隣市の店舗を4店ほど売り場チェックして廻り、昼過ぎに本社へと戻ると。
ちょうど出勤して来た彼女と階段口で出くわした。
「今出勤か?」
「あっ、お、おはようございます。はい、今からです」
ん?
何か、おかしくないか?
彼女の様子が少しいつもと違うように感じた。
視線も合わせようとしないし、俯き加減で眉間にしわも寄っている。
俺、何かしたか?
「小町、具合が悪いのか?」
「えっ?あ、いえ、何ともありませんけど……」
「そうか?」
「あ、はい。あのっ、私もう行きますね?」
「ん」
彼女は俺の前から逃げるように去って行った。
まぁ、社内では殆ど会話した事ないし、他の社員の目もあるから気を遣ったのかもしれない。
彼女はそんな風に気を遣う女性だ。
俺は深く考えず、自分のデスクに向かった。
午後は、菓子部門で夏向けの水物商品(水羊羹・ゼリー等)と、一般食品部門で調味料の選定会か行われる事になっている。
俺は事前に参加メーカーから届いている商品概要書類に目を通していると、
「チーフ、準備が整いました」
「ん、今行く」
菓子部門担当の事務員が呼びに来た。
俺は必要書類を手にして、選定会が行われる大会議室へと向かった。