How much?!
明日の誕生日に、麻生さんに会って自分の気持ちを確かめたいと思っている。
彼が今物凄く忙しいって解ってるけど、『誕生日』という特別な日だからこそ、見えるものがある気がしてならない。
それに、私は知ってしまったんだ。
彼の本当の姿を………。
先週、雑貨部門の特売チラシの写真撮影が本社で行われた。
志帆ちゃんの恋人・皆川さんを筆頭に、紺野部長やら雑貨担当のバイヤーが勢揃いで。
私は業者とカメラマンさんに振る舞うお茶を出す為に撮影室にいた。
本当は志帆ちゃんにお願いしたいところだったけど、その日は公休日で不在。
志帆ちゃんのたっての希望で、私がお茶を出す事になった。
他の事務員に任せたら、きっと色目を使われると思ったのだろう。
私は雑用係も兼ねていたので、部屋の隅に息を潜めて立っていた。
すると―――。
腕組みをした紺野部長が私の隣りにやって来た。
「撮影、順調ですね」
「ん、皆川が張り切ってるからな」
「雑貨のチラシ撮影に参加したの、初めてです」
「おっ、そうだったか?」
「はい。食品と違って、面白いですね」
「フッ、まぁそうだな」
食品は如何にも美味しそうに見えるアングルで撮ったりする為、漆のお盆に乗せたり、演出で氷や笹の葉を用意したりと準備がとにかく大変。
それに比べ雑貨は、脚立やクレーンを使って大きな商品を小さく撮ったり、専属のモデルにアイテムを着用させたりして部分的に撮影したりしている。
これぞまさしく“撮影”って感じで、遠目だけどドキドキしてしまう。