How much?!
「そう言えば、早坂」
「はい」
「引ったくりに遭ったんだって?」
「えっ!………何でその話を知ってるんですか?」
「須藤から聞いたんだよ」
「あっ………」
事務長の須藤さんには話してある。
だって、保険証と社員証を紛失してしまったのだから。
再発行するにあたり、当然報告をしたのだ。
「悪かったな、俺が鍵を届けろと言ったばかりに」
「いえ、あれは私の不注意ですから」
あれは本当に私の不注意だった。
疲れていたというのもあるが、私に隙があったのは確かだし。
「どうやって帰って来たんだ?警察で帰りの交通費でも借りたのか?」
「あっ……えぇーっと、………その……」
「何だよ、お前らしくないな。言いたくないなら言わなくてもいいが」
「言いたくないって訳じゃないんですけど、助けて下さった方の許可を得てないのに、話していいものか分かり兼ねるので……」
「って事は、社内の人間か?」
「ッ?!…………はい」
私のバカ馬鹿ばかッ!!
部長の誘導尋問にサラッとネタを提供してどうすんのよ!
友人に助けて貰ったって言えば済む事なのに………私って、根っからの正直者だ。
ホント、自分の性格が恨めしく思う。
部長から視線を逸らし、モデルに視線を向けていると……。
「もしかして、麻生か?」
「へっ?」
「やっぱりな」
「やっぱりって?………部長、どういう意味ですか?」
「あっ、いや………何でもない。聞かなかった事にしてくれ」