How much?!


確かあの時、彼は……『紺野部長に頼まれて』と言った。


「それ、本当ですか?」

「あぁ。アイツはお前らを迎えに行く為に必死に作業してたよ」

「…………嘘っ」


部長の言葉と彼の言葉。

どちらが本当かなんて歴然だ。


部長は私に対して、1度だって嘘を吐いた事は無い。

どんな時も真摯な態度で接してくれる。

だからこそ、私はこの人を尊敬してるんだ。


じゃあ、何で麻生さんはあんな嘘を吐いたの?

自ら迎えに来たと言うのが恥ずかしくて?

それにしたって、合点がいかない。

私と彼の間には、賭け以外に存在するモノは何もないのに。


もしかして、恩を着せるつもりでわざわざ迎えに来たとか?

………いまいち理解に苦しむわ。


脳内に疑問符が飛び交い始めると、部長がボソッと呟いた。


「うちの会社は、主任に昇進する際に部長や課長、事務長は勿論の事、各部門のバイヤーの評価票を基に決める事になっている」

「えっ?」

「お前が主任に昇進する際にゴリ押ししたのは、俺と…………アイツだよ」

「ッ?!」

「お前は真面目に仕事はするが、いまいち男性社員にウケが良くない。まぁ、媚を売らないというのはいい意味で俺は見てるが、他の奴らは違う。自分の息の掛かった事務員を傍に置きたいモノだからな」


部長は普段見せないような柔和な表情で私の肩を叩いた。


「今話した事は、アイツには内緒な?」


ほんの少し肩を竦めて、部長は席を立った。


「おい、皆川!そろそろ一息入れようか!」


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