How much?!


部長の一言で脳内が大パニックを起こしている。

だってだって、だって……。

私の存在なんて、あの忘年会の時に初めて知ったと思ったから。

そりゃあ、彼曰く『メドューサ事件』で一躍有名になったけど、でも彼との接点なんて何にも無かったのに。

どうして、私の勤務態度を知ってるの?


殆ど放心状態でお茶を配り回った。



 *******


誕生日前日の午後。

私は改装手伝いに配るお弁当(助六)を車に積み込んで、志帆ちゃんと共に美園店へと向かった。


助六は業者へのガソリン代として配られるもの。

夕方までに配達をすればいい事になっている。


3時過ぎに美園店に到着すると、志帆ちゃんの恋人・皆川さんが出迎えてくれた。

私は2人に休憩時間をあげる為、近くにいた美園店のスタッフに声を掛け、お弁当を配り歩くと……。


「もしかして、小町?」

「えっ?…………あっ、浩二?」


改装手伝いに参加している業者の中に、大学時代の同級生がいた。

ゼミが同じだった事もあり、結構仲が良かったうちの1人。

去年、同級生の佐知代ちゃんと結婚した。


「元気だった?そう言えば、さっちゃんオメデタなんだって?」

「あっ、そうそう!今年の夏に生まれる予定なんだぁ」

「おめでとう!」

「ありがとな」


人差し指を鼻の下で擦るはにかんだ仕草は相変わらず。

2人は大学でも有名なカップルだった。

相思相愛……それに尽きる。


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