How much?!
うちの会社の女子更衣室は年功序列制で、入口付近が派遣社員と新入社員。
そして、奥に行くにしたがって勤続年数が長い社員のロッカーとなっている。
更衣室の最奥には1段高く盛られた和室があり、ちょっとした休憩室が設けられている。
そこは、仕事上がりのお姉様方の憩いの場所。
仕事を終え、自宅に帰るまでの息抜きの場所になっているが、最近では私もそこへ呼ばれる事もしばしば。
いつまでも若いと思っていたが、気付けばお姉様方の仲間入りを果たしようだ。
ロッカーからコートを取り出し、溜息まじりにそれを羽織る。
「先輩、こんな所で愚痴ってもどうにもなりませんよ~?」
「………分かってるってば」
私のもとに来た彼女に嫌々返事を返すと、
「あっ、もう~ホント先輩ってば、手が掛かるんだから~。全然メイクが直ってないじゃないですか~」
合コンじゃあるまいし、会社の忘年会に気合いを入れる必要がどこにあるの?
好きな人がいる訳でもないし、ましてや普段から見慣れてるメンツに気合いを入れたって仕方ないのに。
志帆ちゃんは文句を言いながらも、サッとメイクを直してくれた。
「お先に~」
「お疲れ様で~す」
事務所に残る遅番の子達に挨拶をしながら、会社を後にした。
社屋を1歩出ると、肌を刺すような冷たい風が全身に纏う。
「うぅ~寒い!!」
「そりゃあ、冬ですからね~」
私が思わず身を縮込ませているのにもかかわらず、隣りを歩く彼女は至ってクールに言葉を返す。
ホント、志帆ちゃんって掴みどころがない。