How much?!
彼は再びしれっとした表情で『小町』と口にした。
まるで、ずっと前から知り合いだったかのように自然と……。
彼の声音があまりにも心地良くて、不本意だけど脳内で『小町』と呼ぶ彼の声がリピートしている。
………心底ムカつく。
これがコイツの手なんだ。
こうやって女をその気にさせてしまう、根っからのプレイボーイだ!
あっぶなぁ~~いッ!!
危うく、まんまとその手に引っ掛かって『何でもいい』なんて口走る所だった!!
ダメダメ、気を引き締めないと!
脳内の整理を図り、欲しい物を考えていると……。
「小町の望むモノを叶えてやる」
「へ?」
「高級フレンチのフルコースだろうが、海外旅行の航空券だろうが構わない。でも、お前の身分じゃ、長期休暇が取れるとは思えねぇな」
「ッ?!」
「あっ、何なら、鑑別書付のダイヤの指輪がいいか?」
「はっ?」
「フッ。まぁ、そういう物は好きな男から貰わないと意味が無いだろうがな」
完全にフリーズしてしまった。
何……?
フルコースなら妥当かと考えついたけど、……航空券?
どこからそんな考えが思いつくわけ?!
しかも、サラリと罵倒された!
ムッ、ムカつく~~ッ!!
お金があるって自慢したいわけ?
きっとそうに違いない。
キッと睨みを利かせながら、脳内でぎゃふんと言わせられるモノを思い浮かべていると。
「物が嫌なら、違うモノにするか?」
「へ?」
私を一瞥した彼は腕を組んで口を開く。