How much?!


「いや、もうどうでもいい」

「…………えっ?」


彼の視線は私から目の前に広がる夜景へと。

それは、『もう、私の事など気にも留めない』と言われているようで……。


胸が重く軋んで、抉られるように痛みを帯びて……。

そして、瞳からは次々と温かい雫が溢れ出した。


そんな姿を見られたくなくて、私は長い髪で顔を隠すようにしながら、彼と同じように視線を夜景へと移した。


彼の思わせぶりな言動に、私は知らず知らずのうちに期待していたようで。

零れ落ちる涙を隠し、喉から嗚咽が漏れ出すのを必死に堪えて……。

髪を梳く仕草で誤魔化し、泣き顔を隠すので精一杯だった。


すると、歪んだ視界の片隅で、彼がコートへと手を伸ばした。


「っ……」


こんな所まで連れて来たのは何だったのだろう?

気まぐれ?

それとも、からかう為?

じゃ無かったら……何だって言うの?


脳内が軽くクラッシュしている私とは正反対に、彼はコートに指先を滑らせて……。


胸が苦しくてどうにかなりそう。

必死に気持ちを切り替えようと試みても、堰を切った感情はどうにもならなくて。

私はあからさまに顔を背けて深呼吸を何度も繰り返した。


すると、


「小町」


こんな時まできゅんと胸が反応してしまうのが悔しいくらい、彼の声音があまりにも心地良くて。

思わず耳だけでなく、体全体で彼を感じようとアンテナを張り巡らしているみたいに……。


「小町」


少し低めの優しい声音が、背後から私を包み込むかのように感じた、次の瞬間!!


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