How much?!
緊迫した空気を打ち破ったのは………まさに、問題の……原因を作った張本人。
しれっとした顔で私の隣りへとやって来た。
「麻生さぁ~ん!!早坂さんが私達に教えてくれないんですぅ」
「………何を?」
「何って、指輪を贈った相手の事ですよ~!」
「えっ……」
彼女達の言葉に固まった麻生さん。
まぁ、無理もないよね。
だって、本人だもん。
私が呆れ顔でいると、
「いいか?」
「何を?」
「……教えて」
「えっ?!」
「えっ、もしかして、麻生さん知ってるんですか?早坂さんの相手の人!」
「教えて下さいっ!!気になって、仕事に集中出来ませんっ!!」
彼の言葉に驚愕する私をよそに、彼女達は彼を取り囲むように見上げている。
しかも、不必要に彼にベタベタとボディタッチまでして。
「先輩いいんですか~?触られ放題ですよ?」
「うっ………ん」
私の耳元で呟く志帆ちゃん。
私の心の声を代弁してくれている。
出来る事なら『触らないでっ!近づかないで!!呼び止めないでよッ!!』って叫びたい。
だけど、ここは職場だし。
生真面目な性格がこういう所で足枷になる。
それに、彼は我が社で不動の人気を誇る人物。
そんな彼が相手だと知られて、虐めに遭うかもしれないと思うと少なからず怖い。
女の嫉み妬み僻みほど醜いものはないから。
女の子達に囲まれている彼をじっと見据えていると。