How much?!
「ホント、麻生さんってカッコいいよねぇ~」
「好きな女の前だと、あんな表情もするんだねぇ~」
「私、あの指で優しく髪を撫でられたーいっ!」
あの日、彼が毒を吐いた事で彼の本当の姿が知れ渡ってしまった。
けれど、それは………違った意味で、再び私の悩みの種となりつつある。
私の悪口を言われている訳じゃないんだけど、何だかいい気はしない。
毒を吐こうが、彼は相変わらず不動の人気を誇っている。
そして、それは………私の存在すら薄らぐほどで………。
毎度の恒例のランチ相談会開催中。
すっかり常連客になった私達は、店の暖簾をくぐると女将さんに『奥は空いてるからね』と。
そして、メニューを開かなくても脳内にインプットされてるメニューから注文を口にする。
「女将さん、レディースランチ2つね~」
「あいよ」
手渡されたお茶とおしぼりを受取って、奥の座敷に足を進めた。
「先輩、あまり気にしない方がいいですよ~?」
「………ん、分かってはいるんだけどねぇ。耳に入って来ると、どうも心が落ち着かなくて」
「悪口叩かれてるんじゃなくて褒められてるんだから、その辺は大人の対応でやり過ごしましょうよ」
「………ん、そうだね」
志帆ちゃんの言う通り、私が受け流すしか無いのかもしれない。